高速PDCAを回すインハウスSEOチームの作り方 ウェルクス社SEO事例

高速PDCAを回すインハウスSEOチームの作り方 ウェルクス社SEO事例

今回は、ウェルクス社にインハウスチームの作り方やPDCAの回し方についてインタビューします。インタビューにお答えいただくのは、株式会社ウェルクス キャリア事業本部マーケティング部の室谷良平氏です。

株式会社ウェルクス キャリア事業本部マーケティング部 室谷良平氏
株式会社ウェルクス キャリア事業本部マーケティング部 室谷良平氏

ウェルクス社は、保育、介護、福祉業界の人材サービスを運営されています。2018年4月時点で、18個ものウェブサイトをインハウスメンバーで運営され、事業の急成長に貢献されています。

自由闊達なオフィス環境
保育業界最大級の転職支援サイト「保育のお仕事」など18個ものサイトをインハウスメンバーで運営

各所で、SEOやウェブサイトのPDCAを回すための人材が採用できない、教育できないといった話を聞きますが、ウェルクス社は、どのようにチーム作りをされているでしょうか?

 

畑違いの分野から採用して育てる

インハウスで運営されているとのことですが、メンバーはどのように採用されているのでしょうか?

「中途採用中心ですが、営業部門からの異動者など畑違いの分野から来たメンバーもいます。採用段階では、学習意欲が高そうかなど、ポテンシャルを判断して採用・配置しています。」

 

充実した研修内容で戦力化

ウェブマーケティングやSEOの未経験のメンバーを、どのように戦力にされているでしょうか?

「マーケティングチームのメンバーには、SEOに直接関わらないメンバーも含めて、SEOに関する研修を受けてもらっています。研修は、教養編、初級編、中級編に分かれています。

教養編では、検索の本質的な役割やウェルクスのビジネスにとって検索がどういった意味で重要なのかなどを説明しています。SEOやウェブマーケティングの重要性を浸透させることで、社内のコミュニケーションを円滑にする意義もあります。

初級編では、SEOの実践的な講義をしています。「titleタグとh1タグの違いはなにか」「noindexとはなにか」といった基礎的な内容にはなりますが、これだけ抑えておけば、日々の業務の中で、PDCAサイクルの中のDCAは、実行できる内容です。当社では、SEO施策の実装もディレクター自身が行うため、HTML、CSS、JavaScriptなど、フロントエンドの知識も研修内で教えています。

中級編では、検索エンジンのこれまでの進化の変遷や、アルゴリズムの最新トレンドなどについて研修しています。最近であれば、音声検索や昨年の健康医療関連クエリのアップデートなどについて話をしています。」

 

充実した研修ですね。

「マーケティングスキルを強化していくために、今後はより充実した研修内容に変えていく予定で、研修の設計を行っているところです。」

 

教育や研修でのコツはありますか?

「分かりやすく楽しく伝えることだと思います。私自身、たくさんの失敗を経験しているため、初心者が失敗しやすいことや勘違いしやすいポイントがよく分かります。また、分かりやすく伝える工夫として、イメージしやすい言葉を作ることも効果的です。

例えば、『TTP』。これは『徹底(T)的に(T)パクる(P)』の略ですが、要するに、自社サイトや他社サイトで良い点を見つけたら、先人の知恵を借り、巨人の肩に乗ってどんどん取り込んでいきましょうという意味です。

他には、『ビール3杯理論』もあります。ビールを3杯飲んだぐらいの判断力でも使いやすいウェブサイトにしようという意味です。UI改善の際に、施策の立案であったり、メンバー間で基準を合わせるのに役立ちます。」

 

造語は、分かりやすく伝える以外にも、楽しさもあり、チームの雰囲気がよくなりそうです。

「経営者の理解も大きいです。代表や役員も、ウェブマーケティングやSEOへの理解があるため、長期的な施策も実施しやすいです。」

室谷氏
分かりやすく楽しく伝えることが教育のコツだと語る室谷氏

 

高速PDCAサイクルの回し方

施策を企画して実施するまでは、どういった流れでされているのでしょうか?

「施策は、サイト単位で立案しています。想定される成果のインパクトや、効果が出るまでのリードタイムなどから、優先度を整理して実行する施策を決定します。HTMLやCSSの研修を通じて、メンバー自身で実装まで行える体制になっているため、実装工数の見積もりがズレにくいことや、説明のための仕様書作成に時間を取られないことがスピーディーな施策展開につながっていると感じます。」

 

施策の実装は、どの程度、サイト担当者の方が行っているのでしょうか?

「社内のエンジニアの手を借りることもありますが、コーディングも含めて、基本的にはサイト担当のディレクター自身で行っています。Backlogを使ってコードのGit管理をしていますが、Jenkinsを導入し、デプロイまでサイト担当者が行うようになりました。営業職からディレクターになったメンバーもいますが、1年ほどでHTMLやCSSだけでなく、.htaccessを使ってリダイレクトの設定を行ったりもしています。」

 

デプロイまでサイト担当の方が行うとは、すごいですね。効果検証は、どのようにされていますか?

「効果検証は、施策の影響範囲に合わせて、ドメイン、カテゴリ、ページ、クエリの種類などで分けて分析します。GinzaMetricsを使って、キーワードグループごとに自社の順位や競合順位を確認してディレクトリ単位でのモニタリングや効果検証も行っています。サイト構造の問題点を確認するためにPLPレポートもよく使っています。

成功事例は、サイト間で共有できる仕組みをつくりました。施策内容や結果は、いつでも各サイト間で確認することができますし、隔週で行っている『ドヤ会』という成功事例共有会でも、共有されます。『ドヤ会』は成功実績を出した担当者がドヤれる(自慢できる)会です。会の名前含めて、メンバー自身が楽しく共有できるようにしているため、各メンバーは、次回のドヤ会までに成功実績を作ろうという意欲が強いです。」

GinzaMetrics
施策の影響範囲に合わせてキーワードグループごとに効果検証

 

より専門的なメンバーも加えていきたい

今後のチーム作りの方針を教えてください。

「研修や成功事例の共有で、ノウハウを底上げしながらも、各メンバーの得意を活かし、不得意をカバーし合うチーム運営をしてきました。今後はより高度なマーケティングの取り組みを行っていきます。そのために、やはりウェブマーケティングやSEOなどを専門的に行ってきた方にジョインしていただき、よりチームを強化したいと考えています。

現在、当社は上場を目指し、ビジネスが急成長しています。ウェブマーケティングやSEOの専門的な知見のある方にもジョインしていただき、更なる成長を牽引していきたいと思っています。」

 

まとめ

SEOができる人材が採用できないと嘆く企業が多い中、ウェルクス社は、畑違いの分野の人材を採用し、様々な教育・育成の仕掛けにより戦力にし、ビジネスを成長させてきました。人材難に嘆く会社の方も参考にしてみて頂けたらと思います。